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B型肝炎・C型肝炎


B型肝炎・C型肝炎についてのお話です。

B型肝炎とC型肝炎

ウイルスが原因の肝炎は、A、B、C、D、Eの五種類の肝炎が確認されています。A型肝炎とE型肝炎は一過性で、水や食物などを介して経口感染で急性肝炎を起こし治癒します。したがって、慢性肝炎にはなりません。D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスの存在下でのみ存在でき、問題になるのは極めて稀です。このなかでB型肝炎とC型肝炎が特に注目されるのは、いずれも血液、体液を介して感染し、慢性の経過をとり、慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓病の終着駅とも考えられる肝細胞癌をひきおこす可能性があるからです。

ウイルスに感染している人をキャリアと言います。治療中の患者さんに症状のない無症候性キャリアと呼ばれるウイルス保有者をふくめると現在日本にはB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアは150万人、C型肝炎ウイルス(HCV)キャリアは200万人いると言われています。現在日本には年間3万人の肝細胞癌での死亡者がありますが、このうち80%がC型肝炎ウイルスキャリアで15%がB型肝炎ウイルスキャリアです。
全世界的にみるとB型肝炎ウイルスキャリアは3億7千万人、C型肝炎ウイルスキャリアは1億3千万人いると言われています。

感染ルート

感染ルートはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスともに感染は血液、体液を介して感染します。輸血、麻薬覚せい剤のまわしうち、消毒不十分の医療器具の使用、不衛生な刺青、ピアスの穴あけなどの器具の使用、ウイルスキャリアと性行為などが原因です。
C型肝炎ウイルス感染には母子感染、父子感染の可能性も少ないが存在するようです。はっきりとした急性肝炎の症状を起こすことなく発病し、3/4のキャリアは無症状のまま進行し、その1/3は10年で慢性肝炎、20年で肝硬変になり、肝硬変になると1年に7%の頻度でがんを発生すると言われています。そのためなんとしても肝硬変への進展を予防したいのです。症状もなく気がついたら肝硬変ということを避けるためにも定期健診が望まれます。

一方、B型肝炎は成人に感染すると急性肝炎を起こしますが完全に治癒します。まれに劇症肝炎を起こすとされています。B型肝炎の慢性化は出生時の母子感染か乳幼児期の感染によるものです。その後発症せず経過し、20歳前後に免疫反応が確立する時期に発病します。急性肝炎症状を起こし9割の人は感染力の低いウイルスに変化し、治癒します。この時期にウイルスを排除できなかった1割の人が慢性肝炎となります。この状態になるとウイルスとの共存は難しく、炎症は持続し繊維化を起こし肝硬変に向かいます。
慢性B型肝炎になると、治癒したと思われる人や無症候性キャリアからでも、がんが発生することが知られていますので要注意です。良くなってからも年2回の定期健診が必要です。

日本に多かった母子感染による経路は、1986年に始まったB型肝炎予防対策事業で、妊娠判明時に母親のウイルス検査をおこない、出生時にガンマグロブリンとワクチンを使用することにより、新生児のキャリア化は90%抑えられることとなり、新発生は大きく減少しています。近年海外から遺伝子型の異なるB型肝炎の進入がみとめられ、慢性化する急性肝炎の存在もわかってきました。大都市から少しずつ地方に広がってきています。

B型肝炎とC型肝炎の診断

B型肝炎とC型肝炎の診断は、血液の検査をおこないます。検診、手術や検査の前の血液検査、腹部エコーやCT検査で肝臓病が疑われた時におこないます。このときHBs抗原とHCV抗体を測定します。抗原はウイルスの一部で、抗体はウイルスの侵入に対し体内で造られるたんぱく質です。B型肝炎ウイルスキャリアの血液中からHBs抗原というウイルスの表面の一部、マーカーが証明されます。急性肝炎のときには、IgM型のHBc抗体とよばれるウイルスの核内物質に対するHBc抗原に対する抗体が増加しています。このとき、肝臓はビリルビンという色素の排出ができないために黄疸が出現し、AST(GOT),ALT(GPT)など肝臓の中に含まれる酵素が肝細胞の破壊とともに血中に放出され、高い数値を示します。この感染は一過性の経過で治癒します。急性肝炎が治癒するとHBs抗原は消失し、新たにリンパ球で作られたHBs抗体が出現します。IgM型のHBc抗体も低下し、IgG型のHBc抗体に変わります。慢性肝炎でも必ずHBs抗原は陽性です。HBs抗原が陽性でもAST,ALTなどの肝機能検査が続けて正常ならば、無症候性キャリアと考えられ肝臓は、安定した状態にあると考えられます。次に行う検査はHBe抗原とHBe抗体の測定です。B型肝炎ウイルスの量も簡単に測定できるようになりました。HBe抗原陽性でHBe抗体陰性の状態はB型肝炎ウイルスの量も多く活動性が高い状態です。感染力も強く病原性も高いのです。HBe抗原陰性で、HBe抗体陽性のときは、感染力も低下し病状も安定していることが多いのです。頻度は少ないのですがHBe抗原陰性でHBe抗体陽性なのにAST,ALTなどの肝機能検査の異常が続き、病状が進行することがあるので要注意です。

HCV抗体が陽性の際にはC型肝炎ウイルス感染が疑われます。HCVRNA(C型肝炎の遺伝子はRNAです)を測ります。HCV抗体というのはC型肝炎ウイルスが人体に入ったとき、リンパ球の作る免疫に関係するたんぱく質で、現在ウイルスがいるかどうかを問いません。HCVRNAはウイルス自身の核酸の一部ですので、陽性であればウイルスの存在は確実です。HCVRNA陽性の状態がC型肝炎ウイルスキャリアです。C型肝炎ウイルスキャリアは慢性C型肝炎患者として治療の対象となる方です。今すぐ治療を行うか経過を見られるかは、血液検査(ALT、血小板数、ウイルス量、ジェノタイプ)年令によって判断するようガイドラインは示唆しています。ウイルス量の測定方法の進歩は著しく、新しく開発されたタックマン法でHCVRNAの量を測定するとかつての定性検査より敏感なため、この方法だけで存在診断も治療の経過を見ることも出来ます。C型肝炎ウイルスは変異を起こしやすいウイルスです。大きなグループ分けですが(遺伝子亜型といいます)日本人に多いIb型、日本には比較的少ないがインターフェロン治療が効きやすいⅡa型 Ⅱb型がジェノタイプとして知られています。

B型肝炎とC型肝炎の治療

B型肝炎の治療は年齢により変わってきます。35歳以下の若年症例には、まずはインターフェロンの適応があるかを検査します。抗ウイルス剤としてのインターフェロンの効果があれば、無症候性キャリアと同等な内服薬も要らない健康人になれます。インターフェロンが期待できない若年者や、35歳以上で肝機能検査がALT31以上の症例には、B型肝炎ウイルスの遺伝子であるDNAの材料となる物質によく似た分子式をもつ、核酸アナログ製剤が使用されます。B型肝炎ウイルスのDNA合成を阻害することによりウイルスの増殖を抑えます。現在、ラミブジン、アデフォビル、エンテカビルの3種類が臨床的に使用されています。これらの薬は経口1日1回内服すればよく、副作用も少なく肝機能の改善も著明でした。しかしラミブジンは切れ味はとても良かったのですが、中止をすると悪化する症例が認められ、不耐性株という効かないウイルスが高頻度に出現、肝機能の悪化をきたすこともわかり、第一選択として変異を起こすことの少ないしかも強力なエンテカビルの使用が推奨さています。
C型肝炎の治療にはインターフェロンが用いられます。これについては、次章のインターフェロンの話で説明いたします。

肝炎治療の目的は、肝機能の正常化、原因ウイルスの排除、炎症の沈静化です。このことが肝硬変への進展を防ぎ、肝癌の発生を抑制することで生命予後の改善を計ります。医学の進歩とともに新薬も開発され臨床的にも使われて、一定の成果がみられています。しかし非常に高価です。前述のように世界には非常にたくさんの慢性肝炎患者がおります。適切な診断、治療が受けられない人々が大勢いることも事実です。これらの人々にも医療の恩恵が受けられる世になることを願っています。

田中消化器科クリニック
名誉院長 小島 紘一

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