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腸内環境を整える便秘症治療


2018年10月7日(日)しずぎんホールにて「聞いてなるほど!いきいきライフ」が開催され、田中院長が「腸内環境を整える便秘症治療」と題して講演しました。

10月28日(日)の静岡新聞 朝刊に掲載されました

腸内細菌は日々〝作り込む〟もの

刺激性便秘薬利用は慎重に
私たちが生きていく上で、排泄(はいせつ)は重要です。お通じが1週間に2回以下だと便秘症と呼びます。便は水分が60%、腸の内壁粘膜が20%、食べ物のかすは5~10%で構成されています。量はバナナ1.5~2本分で、茶色が理想的です。善玉菌が多いと臭いはあまりなく、悪玉菌が多ければ悪臭がします。
人間の体は約3時間に1回空腹期収縮が起こり、消化器官にある便が直腸まで運ばれます。翌朝起床時、直腸に便がたまった情報が脳に伝わって排便につながります。また朝食が胃に入ると腸管の蠕動(ぜんどう)運動が始まり、排便が促されます。ちなみに、洋式便座では浅く座り「前傾35度」で前かがみになると、スムーズに排泄できます。
さて、便秘で悩む人は多いのですが、たかが便秘とあなどれません。病気や死に至ることもあるのです。冬にトイレでいきんでいると、血圧が一気に上がって脳血管障害の危険性もあります。便が詰まれば大腸穿孔(せんこう)もあります。
便秘で悩んだ時、まず考えるのが便秘薬ではないでしょうか。便秘薬には「刺激性下剤」と「非刺激性下剤」の2種類があります。酸化マグネシウムに代表される「非刺激性」は、腸に水分を取り入れ、便を柔らかくして排便を促します。これらは常用しても副作用はほぼありません。
もう一つの「刺激性」は、大半の市販の便秘薬が該当します。センナやダイオウ、アロエなどの成分、これをアントラキノン誘導体といいますが、使用には注意が必要です。これらは腸管運動の神経を刺激して排便させるのですが、常用すると効果が失われ、逆に便秘症を重症化させます。さらに長期間の服用で、大腸黒皮症と言って腸粘膜が黒くなります。しかも大腸腺腫、大腸がんの可能性も出てきます。ただ、これらの薬は1カ月に2~3回の使用なら問題はありません。
最近では、新しい排便薬のアミティーザ、リンゼス、グーフィスなどが出てきましたので、上手に処方していきたいと考えています。

毎日食べたい両手一杯の野菜
次に食事の話をしましょう。乳酸菌やビフィズス菌など、腸に善玉菌を届けるものをプロバイオティクス、善玉菌のえさとなる食物繊維やオリゴ糖をプレバイオティクスと言います。今、日本人の食物繊維の摂取量が減少しています。約60年前の昭和30年代、日本人は1日30g以上の食物繊維を食べていましたが、現在はわずか10g台です。私たちはもっと野菜を食べるべきです。両手に一杯の野菜を盛ると食物繊維は20gを超えますので、目安にしてください。
食物繊維には2種類あります。まず水に溶けない不溶性のもの。これは便を形づくり、蠕動運動を促します。次に水に溶ける水溶性のもの。便を膨潤させ、血糖値や血圧の上昇を抑えます。不溶性の食品はゴボウ、キャベツ、玄米などの菜っ葉類や穀類が、水溶性はイモ、カボチャなどが挙げられます。両方とも取りましょう。ちなみに海藻類は食物繊維とマグネシウムが豊富で、便通によい食材です。
腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌など多くの細菌がいます。善玉菌はビフィズス菌、乳酸菌などで、蠕動運動を良くして悪玉菌の侵入や増殖を防ぎます。悪玉菌はウェルシュ菌、ブドウ球菌など、腸内で有害物質を出します。日和見菌は大腸菌などが挙げられます。
食生活として、善玉菌を増やす食事を意識して取りましょう。乳酸菌ならみそ、しょうゆ、ぬか漬け、キムチ、納豆、ヨーグルトが豊富です。ほか、納豆には納豆菌、甘酒や麹(こうじ)には麹菌、ぬか漬けには酪酸菌が含まれます。
善玉菌が増えて分解されると、短鎖脂肪酸ができます。腸内の炎症が抑えられ、免疫力が高まり、代謝や便通も良くなります。一方、悪玉菌は肉食・高脂肪食で増えます。悪玉菌が優勢になると、発がん促進物質の発生や細菌毒素が生まれて、大腸がん、肝臓がんに影響すると言われています。

多様な細菌が成す腸内フローラ
腸の上皮には100兆個もの細菌が連なっていてお花畑のようであることから、「腸内フローラ」と呼ばれています。この腸内フローラが崩れると、アレルギーをはじめ、多発性硬化症のような特定疾患、自閉症にも関係すると言われます。腸内フローラだけで重量は約1.5kgもあります。今では、腸内細菌も多様性といって、さまざまな細菌がいるほうが病気になりにくいことが知られています。
この腸内細菌叢(そう)が今、危機を迎えています。その理由の一つに前述の食物繊維の摂取減少がありますが、もう一つは加工食品の増加と抗生物質の乱用です。加工食品は調理時に何度も食材を洗うため、栄養素や微量元素が流出してしまうのです。また、肉類には精製油脂や化学調味料、防腐剤のリン酸塩が注入されます。抗生剤は医薬品に限らず、家畜や飼料、養殖の魚、農薬に使われ、私たちは知らずに抗生物質を取っているのです。
よりよい排便をするためにも、まず腸内環境を整えること。薬に頼らず、自然の素材を調理し、善玉菌の多い食事を積極的に取ることが大切です。毎日良い便が出て、臭いおならがなく、快適な状態というのが理想的な腸です。毎朝便をチェックして、よりよい腸内環境をつくりましょう。

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