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ホーム > アンチエイジングトピックス > No.087 腸内細菌叢の多様性とは?

No.087 腸内細菌叢の多様性とは?


次世代シーケンサーという分析機器により腸内細菌叢のDNA塩基配列を解読することが可能となってきたことで、その多様性の変化と疾患との関係が明らかとなってきました。
そこで今回は腸内細菌叢の多様性についてお伝えします。

腸内細菌叢の解析方法の変遷

近年、ヒトの腸内細菌叢と疾患との関連性を示す研究が数多く発表され、腸内細菌叢の役割がますます重要視されるようになってきました。

過去において、腸内細菌は嫌気性培養法により約200の細菌が培養可能となり、それぞれの菌種に関する研究が行われていましたが、近年では培養法では調べることのできない菌種が数多くいることがわかり、新たな分析 方法として16S rRNA遺伝子を用いた菌種解析方法が開発され、約1,000菌種以上が同定できるようになりました。

しかしこの方法でもそれぞれの菌種の機能性まではわかりませんので、最も新しい分析方法として次世代シーケンサーという機械を用いて各菌種のDNA塩基配列を自動的に解読する方法が開発され、腸内細菌叢と疾患との関係性が一気に解明されるようになりました。

腸内細菌叢の変容(dysbiosis)と疾患

次世代シーケンサーの登場により、ヒトの腸内細菌叢の種類を調べるとともに各菌種の持つ機能性が明らかになり、ある疾患を持つヒトの腸内細菌叢に一定の特徴があることがわかってきました。

例えば、大腸がんの患者は、健常者とは異なる細菌組成あるいは構成菌種から成り立っており、このように通常とは異なる細菌叢の異常を変容(ディスバイオシス dysbiosis)と言います。
これまでに調べられている腸内細菌叢の変容が関与しているといわれている疾患は以下の通りです。
大腸がん 肥満
炎症性腸疾患 2型糖尿病
過敏性腸炎と小腸細菌異常増殖症
アレルギー疾患
抗菌薬起因性下痢 自閉症などの精神疾患
肝臓疾患(ASH、NASH) 多発性硬化症

腸内細菌叢を変動させる要因は?

腸内細菌叢は安定していると考えられてきましたが、様々な因子の影響で変動することも分かりつつあります。

例えば最も重要な因子は食事内容です。
伝統的な和食と典型的な欧米食による比較、あるいは高脂肪食摂取による変化が研究されています。

また抗菌性物質の投与、特に経口投与は腸内細菌叢の構成に著しい影響を与えることがわかっていますし、下痢や便秘、感染症によっても変動します。

更に宿主側の要因によっても構成に影響を与え、胃酸や胆汁酸、各種の酵素や多糖類の分泌なども影響を与えます。
なお、ストレスも変化の一つの要因と考えられ、生体に複合的な反応を引き起こすことで腸内細菌叢の構成に影響を及ぼすと言われています。

変容(dysbiosis)の診断基準は?

これまで見てきたように、様々な要因により腸内細菌叢が変容すると疾患に至る可能性が高くなります。

しかし、この変容を評価、判断するには日本人の健常者のデータが必要となります。
そこで、早稲田大学らのグループが、106名の大人の腸内細菌叢のDNAを次世代シーケンサーを用いて分析を行いました。

その結果、他の12か国の健常者のデータと比較したところ、日本人固有の腸内細菌叢を有することがわかりました。
そのため、変容を診断、評価するうえでは、同じ国の健常者データを基準にする必要があるといえます。

今後、腸内細菌叢の変容をターゲットにした疾患治療では、変動要因を取り除くこととともに、宿主への影響を把握した複数の細菌種の組合せが開発されるかもしれません。
【参考】
領域融合レビュー,2,e011(2013)
モダンメディア60巻10号2014
モダンメディア60巻11号2014
DNA Research,2016,1–9
情報提供元:株式会社ヘルシーパス