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ヘリコバクター・ピロリ菌


みなさんはピロリ菌、ご存知ですか?
最近、テレビや新聞、健診の時などによく耳にされるかもしれません。

ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌といいます。
胃に住み着いて、慢性胃炎や胃十二指腸潰瘍、胃がんなどを引き起こす菌です。突発性血小板減少性紫斑病や胃MALTリンパ腫にも関与することが知られています。
ヘリコバクター・ピロリ菌、変わった名前ですが、菌の形がらせん形のため、らせん型という意味の「ヘリコ」が使われました。ヘリコプターのヘリコと同じ意味です。
バクターはバクテリアの意味、ピロリは胃の出口の幽門付近を意味し、幽門部に多く存在するため、あわせてヘリコバクター・ピロリ菌と命名されたのです。

人間の胃は、食べ物を消化するために塩酸が分泌され、Phが1~2の強酸性という過酷な環境です。
昔から、このような環境の胃には、細菌などいるはずがない!と信じられてきました。ただ、100年ほど前から、胃に細菌がいるかも?というマイナーな説もありました。

私も、医学生のころ、胃炎や胃潰瘍の原因は、ストレス、アルコールなどの刺激物によって胃酸分泌が増え、胃粘膜の防御とのバランスが取れなくなるため、と教わりました。
その頃は、とても胃が荒れた患者さんや、吐下血したり、胃に穴が開くようなひどい胃十二指腸潰瘍の患者さんがたくさんおられ、進行胃がんになってから見つかる方が大方でした。
また、不思議なことに、統計を取ると、欧米人よりも日本人の方がひどい慢性胃炎や胃がんの方が多いことがわかり、胃の病気は日本人の国民病のように思われていました。

1982年、オーストラリアのロイヤルパース病院の病理学医師、ウォーレン先生が、胃炎の患者さんの胃粘膜の組織にゴミのような物質を見つけました。
「もしかして、これが、噂の胃の細菌じゃないの!?これは世紀の大発見ではないか!?」
と疑ったウォーレン先生は、当時なんと研修医だったマーシャル先生と、研究を始めました。

ウォーレン先生が見つけた「ゴミみたいなもの」が、本当に胃に存在する細菌かどうかを証明するためにはどうしたらいいでしょうか。
まず、そのゴミみたいなものを、シャーレの培地で育てて、増やし、観察する必要がありました。

二人は一生懸命、培養を試みますが、全然うまくいきません。
それもそのはず、普通の細菌は、培地に植えて48時間くらいで増殖してくれますが、ピロリ菌は培養に4日間かかる菌だったのです。
二人は、48時間観察したけど何も生えてこない培地をゴミ箱に捨てる毎日でした。
1984年4月、たまたまイースター祭でお休みが続いたときのことです。
マーシャル先生の休暇のため、培地を5日間放置していました。なんとその培地に、ついにピロリ菌の小さな塊が生えたのです。

惜しいことですが、日本でも同年に、兵庫医科大学がピロリ菌の培養に成功しました。
ウォーレン先生に先をこされた当時の兵庫医大の医師たちはとても悔しがったそうです。

さらにマーシャル先生がすごいのは、培養したこの菌を実際に自分で飲み込んで、急性胃炎が起こるか確かめたのです。
菌を飲んで数日後、マーシャル先生は急性胃炎を起こします。
そして胃カメラ検査を受け、自分の胃粘膜の組織を生検してもらい、顕微鏡で調べた結果、マーシャル先生の胃粘膜にピロリ菌と急性胃炎を認めたのです。
1984年7月、ついにピロリ菌が胃の粘膜で生息し、胃炎を起こすことが証明されました。
この功績をたたえられ、2005年、ウォーレン先生とマーシャル先生はノーベル医学・生理学賞を受賞されました。

これからも時々、ピロリ菌についてご紹介していく予定です。
よかったら読んで下さいね。

医師 村田 美重子

村田 美重子