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第11回日本抗加齢医学会総会に参加して  看護師 永田善子

2011年5月27日~5月29日の3日間、第11回日本抗加齢医学会総会が国立京都国際会館で開催されました。東日本大震災の影響を感じさせないほど多くの人々が集い、活気ある学会だったと思います。今年はThe 1st International Conferenceが企画され、Adrenal Fatigue(アドレナル ファティーグ)をテーマにしたSymposium Sessionでは田中先生が座長を務められました。
そして、今年も多くの先生方からお話を伺うことができました。心に残ったいくつかのお話をご報告いたします。


高齢者における血中ビタミンD濃度の意義                          -特に転倒発生との関連性について-                        国立長寿医療研究センター研究所 鈴木 隆雄先生

今注目をされているビタミンDについてのお話を聞くことができました。

ビタミンDは紫外線との関係が大きく、北緯40度を過ぎると年間を通して不足するといわれています。18世紀の英国ではスモッグ(ばい煙)によって、日照不足となり足や手が変形する‘くる病’が問題となりました。後にビタミンDが欠乏しておこる病気であることがわかりました。
ビタミンDは重要なビタミンですが、現代人も不足傾向が見られ、40歳以上の日本人女性の半数が、血中の25(OH)D3が低下しています。また、60歳代では70%の人が不足傾向にあるという統計があります。このように、加齢と共にビタミンD産生能力は低下し、血中のビタミンD濃度も低下します。
また、結腸がん、乳がん、前立腺がんの患者でビタミンDが低下しているという報告もあります。
最近では、ビタミンDと加齢によって筋肉量が減少するサルコペニアとの関係や、転倒との関係についての研究が盛んになされています。
高齢者において転倒発生が多くなるのは、骨だけでなく筋力、バランス能力も低下するからと考えられます。歩く能力にはアルブミンがかかわっていますが、最近ビタミンDのかかわりが大きいことがわかりました。ビタミンDは、骨だけでなく筋力や歩行スピードにも関係しているそうです。
ビタミンD濃度の低い高齢者を1年間追跡調査したところ、片足たち時間と筋肉量は低下し、歩くスピードも低下しました。そして転倒は増加しました。ビタミンD濃度が1ng/dl低下すると3%の転倒リスクがあるそうです。
鈴木先生が行った研究では、ビタミンD投与によって転倒が2割も減少したそうです。また、国際単位1000~1400IUのビタミンD投与群において、大腿頸部骨折が2割減少することを確認されました。
ビタミンD濃度は、男性ではあまり変化はありませんが、女性は年齢5歳ごとに低下傾向が加速するようです。女性は加齢とともに転倒回数が上昇します。また、転倒2回以上の人も増えるという統計もあります。特に女性は、ビタミンDの摂取に気をつけること、そしてADL(日常生活動作)が低下した高齢者は、1日5分でも太陽に当たった方がよいと話されました。

抗加齢医療における血中ビタミンD濃度とPTH濃度との関係                                                                                                    満尾クリニック 満尾 正先生

もう一つビタミンDについて興味深い発表がありました。
ビタミンDとホルモンとの関係についてのお話です。

血中PTH(副甲状腺ホルモンparathyroid hormone)濃度の上昇は加齢やビタミンD欠乏に伴いみられ、骨粗鬆症や認知症の原因になると言われています。
満尾先生は、抗加齢ドック受診者におけるPTH濃度と血中25(OH)D濃度との関係について調べました。また、25(OH)ビタミンD濃度が20ng/mlに満たない低ビタミンD血症患者に、ビタミンD3製剤1000IU/day投与を行い投与前後におけるPTH濃度の変化を測定しました。
その結果、血中PTH濃度と25(OH)D濃度とは逆相関し、表のようにビタミンD濃度が高くなるに従ってPTH濃度が有意に減少しています。     
さらに低ビタミンD血症患者にビタミンD1000IUを投与した結果、PTH濃度は45.8±11から43.2±13へと減少傾向が見られたと発表されました。

鈴木先生と満尾先生のお話からビタミンD濃度を高く保つことは、特に女性にとっては大変重要なこととわかりました。

教育講演「口腔から考える全身の抗加齢医学」                                 鶴見大学歯学部病理学講座 斎藤 一郎先生

次に、歯科医である斎藤先生は、抗加齢歯科医学の現状と取り組みについてお話してくださいました。

口腔は、食べる・話す・笑う・味わう・飲み込む・噛み砕くなど摂食・嚥下、呼吸という栄養摂取と生命維持のための役割を果たしているだけでなく、音声・言語のようなコミュニケーションをとるための文化的な役割を備えた器官である。
そして、口腔は全身の健康に深く関与しています。
なかでも唾液は健康に大きく影響します。人間は1日1~1.5Lの唾液を分泌します。唾液には食べ物の消化を助け、虫歯や歯周病を予防する他に、抗菌作用があり、また、傷ついた細胞の修復を促す成長促進因子も含まれているなど様々な働きがあります。
今、様々な酸化ストレスによって唾液分泌減少症が増えています。ドライマウスだと萎縮性胃炎になる確率も高くなるそうです。
活性酸素を取り除く抗酸化酵素SODが欠損しているマウスでは唾液分泌が低下しているとの研究発表があります。また、CoQ10が上昇すると唾液分泌も上昇するとの発表もあり、酸化ストレスと唾液との関係についての研究がされています。
カロリー制限で老化遺伝子の発現が60%改善され、さらに唾液の分泌も促進するといわれています。赤ワインに含まれるレスベラトロールはカロリー制限様の働きにより長寿遺伝子SIRT1(サーチュイン)を活性化することが知られています。
薬で唾液の分泌を抑えたドライマウスであるNODマウスに、レスベラトロールを投与するとドライマウスが改善されるという研究が発表されました。このことは、レスベラトロールによってSIRT1(サーチュイン 長寿遺伝子)を介した内分泌腺が上昇するからと考えられます。

その他にも様々な研究がなされています。
歯周病を治療することによって糖尿病のマーカーであるTNF‐α、HbA1C、さらに血管内皮機能を改善することもデータで明らかになっています。
唾液とホルモンとは相関することを、DHEA-Sとの比較から説明して下いました。
年齢とともにDHEA-Sは低下しますが、カロリー制限でDHEA-S低下を抑えることができます。ストレスでDHEA-Sは低下しますが、唾液分泌が上昇することでDHEA-Sが上昇傾向となります。

また、口腔は、喜怒哀楽の表情をつくるなどに欠かせない器官です。
楽しいから笑うのではなく 笑うから楽しくなると斎藤先生はおっしゃいます。
「笑う門には福来る」
笑うことで、こころのあり方を人為的に変えられるともおっしゃっていました。
噛む力と筋力 噛む力と骨密度は相関していて、口腔筋の重要性も話されました。
重金属汚染については、歯に詰めたアマルガムによって水銀汚染を引き起こすことがありますが、水銀排泄にはチオラ錠が有効であることを明言されました。

そして、体ができ上がるシステムと、体をこわさないようにするシステムに歯が重要な役割を果たすと述べられました。歯髄細胞はとても良質な細胞で、全身の再生医療に利用できるとのことで歯髄細胞バンクを展開していきたいと話されました。
臍帯血バンクの動向は、日本ではたったの0.5%にすぎず、歯髄細胞バンクはHML細胞があえば他の人にも提供できるなどのメリットがあるそうです。乳歯をとっておき、歯髄細胞バンクに預けておくというネットワークづくりは、歯科医の役割ですと結ばれました。

口の中を健康に保つことは、全身の健康に深く関係していることがよくわかりました。
また、歯医者さんで抜いた歯が、自分自身や家族のいざという時の再生医療に役立つというすばらしいお話も伺うことができ、歯についての考え方が変わりました。

特別講演「抗加齢医学とフリーラジカル」                                    京都府立医科大学学長/日本抗加齢医学会理事長  吉川 敏一先生

吉川先生は、エイジングにおけるフリーラジカルの関与について説明し、抗加齢医学としての可能性についてもお話してくださいました。

活性酸素には、酸素(O2)が細胞内のミトコンドリアでエネルギーを生み出す時に発生するスーパーオキシドとそこから生じる過酸化水素、さらに過酸化水素が変換されてできるヒドロキシラジカルがあります。

スーパーオキサイド - 過酸化水素 - ヒドロキシラジカル - 水
O2-          H2O2       ・OH      H2O

そして酸素が紫外線や放射線などのエネルギーを得て反応性の高い状態となった一重項酸素(1O2)があります。
NO(一酸化窒素)も不対電子をもっておりフリーラジカルです。
NO(一酸化窒素)は血管を拡張する作用を持ち、救急車にも一酸化窒素ボンベが積まれているように、有益だが大量だと肺障害が起きるなど身体への影響を及ぼすものがあります。このようにフリーラジカルの障害から身を守ることが大切で、今注目されている放射線や紫外線の障害は、DNAの酸化障害をおこすので抗酸化物質を多くとることが重要と述べられました。
抗加齢医学会も10年を過ぎ、不老不死→寿命を延ばす。125歳まで生きよう→健康寿命をのばす。がんとの共存→疾病の予防および治療への応用をめざす。と考え方も変わってきました。
そして、理論(エビデンス)に基づく学問を目指すことの重要性を説明されました。
抗加齢医学とは、加齢による変化を予防し、疾病の発症率を下げ疾病を予防・治療するすべての専門分野に反映され、元気で長寿を享受することを目指す理論的、実践的科学でなくてはならないと述べられました。
肥満はがんによる死亡の危険因子で、消化器のがんは肥満と関係していること、糖尿病の死因は、①肝疾患 ②消化器がん ③虚血性心疾患であるので糖尿病の治療が必要であること、アルコールをとらないのに肝臓に脂肪が蓄積することで起こる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、ビタミンE投与でGPT・GOT値が改善されるとのこと、このように「肥満」「メタボリックシンドローム」の治療はアンチエイジングにつながります。

日本は少子化が進み65歳以上の老齢人口が増え、生活習慣病も増えると予想されます。
大豆のイソフラボン、玉ねぎのケルセチンなどは動脈硬化予防の働きがあり、農作物における抗加齢医学への可能性が大きいと述べられました。
これからは、医療にとどまらず医・農連携によって、農業技術、生産方法を駆使し、医・工・商・が連携して高機能デザイン農産物「アグロメディカルフーズ」による革命を起こしたいと結ばれました。

吉川先生のお話は、医療だけにとどまらず様々な分野の方が参加される抗加齢医学会ならではのお話でした。
吉川先生がお話下さったように、細胞の酸化はがんや病気、老化などを引き起こすといわれていますが、少量の酸化ストレスは、体がもつ抗酸化力を強化するという考え方もあり、「ホルミシス効果」について今回ポスター発表をされている方もありました。
当院でも行っている高濃度ビタミンC点滴では、点滴によって発生する過酸化水素という活性酸素が、がん細胞を死滅させるという働きがあります。活性酸素について考えると頭が混乱してしまいますが、人間の細胞の中ではさまざまな不思議な機能があって、まだ解明できていない事がたくさんあるのだと思います。もっともっと知りたいという気持ちが大きくなりました。抗加齢医学会も回を重ねるごとに様々な研究や考え方が発表されるようになり、その中で何を信じていくべきか迷いが生じます。勉強を重ね抗加齢医学の本質を極めていきたいと、今回は強く感じました。これからも勉強を続けていきたいと思います。今年も抗加齢医学会に参加させていただきましてありがとうございました。